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国連再考 第3部 (05) ‐ 付属機関
2003年09月26日
 「老兵は死なず、ただ消えゆくのみ」と述べたのはダグラス・マッカーサー元帥だったが、国連機関は「絶対に死なず、絶対に消えず」と評される。 一度、創設された付属機関や創設機関はいくらその当初の使命を達したとしても、廃止や閉鎖されることは絶対にないというのだ。

 こうした実例として米国関係者の間でよくあげられるのが「放射線の影響に関する国連科学委員会」(UNSCER)である。 同委員会は一九五五年十二月に国連総会の決議により国連の付属機関として設立された。 その目的は原子放射線の人体や環境に与える影響についての調査や報告とされていた。

 同委員会の創設にあたった元国連事務次長の米国人のロナルド・スパイアーズ氏は懐述する。

 「当時の考え方としてはごく小さな研究グループをつくり、特定の放射線の影響を調べて、報告書を一本まとめ、その後すぐに解散する予定だった。 当時は若いスタッフだった私がその三十四年後の八九年に今度は事務次長として国連での仕事を再開してみると、このグループがまだ存続しているのに驚いた」

 「放射線の影響に関する国連科学委員会」は八九年の時点で確かに存在した。 ウィーンに本部を置き、常駐のスタッフを抱え、毎年一度は計二十一カ国の科学者を集め、年次会議を開いていた。 そしてその状況は今も変わらない。

 スパイアーズ氏はいぶかる。

 「この委員会は今も毎年、報告書を発表し、国連総会がそれを称賛する。 だが関係者にその報告書の意味を問うと、誰もわからない、という対応だった。 そもそもこの委員会が何を目的としているのかがわからないのだ」

 なるほど同委員会の活動目的とされる原子放射線の環境や人体への影響の調査となれば、同じウィーンにある国連関連機関の国際原子力機関(IAEA)に放射線研究部門があり、その機能を果たす。 国連専門機関の世界保健機関(WHO)とユネスコのいずれにも原子力放射線の影響を調べる部門があるし、軍縮を担当する国連総会第一委員会も、総会が作ったチェルノブイリ事故国際協力機動班も、同様の機能を有する。

 だから「放射線の影響に関する国連科学委員会」が存在する必要はあえてなく、関係者たちがその委員会の目的がわからないと答えても、不思議ではないこととなる。 現実に同委員会を無くそうという提案も民間の国際放射線防護委員会(ICRP)などから出た経緯がある。

 同委員会の側はこれに反発し、二〇〇一年十二月には国連総会に同委員会を国連機関としてあくまで存続させるという決議案を出し、可決させてしまった。 かくて同委員会は目的も不明なまま、他の国連機関との機能を重複させながら、存在を無期限に続けることとなる。 まさに「国連機関は絶対に死なず、絶対に消えず」なのである。

 国連にはユネスコのような専門機関とは別に、総会の決定で創設できる同委員会のような付属機関というのがある。 国連誕生の後、各国の国連への期待が高かったとき、この付属機関はどんどん増えていった。 その中では一九四六年に出来た国連児童基金(ユニセフ)、四九年にスタートした国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)、五一年からの国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などが代表的だった。

 総会での決定とは別に国連社会経済理事会も独自の下部組織を次々につくり出していった。 アジア、ヨーロッパ、中南米などごとの経済委員会、そして統計委員会、人口委員会、社会開発委員会など各種の機能委員会などがそのほんの一部だった。

 こうした国連機関の特異体質を国連を長年、研究したイギリス人ジャーナリストのローズマリー・ライター氏は自書「失われたユートピア=国連と世界秩序」で批判する。

 「国連の専門機関や付属機関の長は国連事務総長にも、あるいは出資する各国政府の指示にも、あえて従わず、独立した主権国家のような王国を独善的に作るようになった。 これら機関は『分野ごとアプローチ』をとった。 一定の限られた分野で少しでも新しい問題が起きてくれば、すぐにその分野での組織を拡大するという方式だった。 その結果、各機関は他と活動を重複させながら膨張していった」


古森義久氏 産経新聞2003年9月26日付朝刊記事

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