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資源小国の挑戦 第2章 原発再考(4) もんじゅの知恵
2006年03月29日
 5基の商業用原子炉が稼働する敦賀半島にはもう一つ、10年以上眠ったままの原子炉がある。高速増殖炉の原子炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)だ。

 今月六日、そのもんじゅの建物内に「切断を開始します」と大きな声が響きわたり、電動カッターが直径16センチのステンレス管を切断した。平成7年12月に発生したナトリウム漏れ事故から10年あまり。事故を起こしたもんじゅのステンレス管が切断された瞬間だった。

 燃やした量よりも多いプルトニウムを作り出せる"夢の原子炉"である高速増殖炉は、核燃料サイクル構想の中心的な存在に位置づけられていた。

 だが、冷却用のナトリウム漏れ事故で、もんじゅは運転を停止したまま。平成20年前半の運転再開に向け、昨年9月にようやく改造工事が始まったばかりだ。

 作業を見守った日本原子力研究開発機構の高山宏一・もんじゅ開発部技術課長は、事故から今日までの長い道のりを思い出しながら、「もんじゅは宝の山。後世に役立つ成果を残そう」と決意を新たにした。ステンレス管の切断は、研究開発に向けた一歩を改めて踏み出したことを意味するものであった。


 10年前の事故は、2次系ナトリウムの漏洩という副次的な事故であり、放射能漏れなどの重大な影響はなかった。このため、専門家の間には「すぐに復旧できる」と楽観的な見方が多かった。だが、施設を運営していた動力炉・核燃料開発事業団(動燃)が事故現場の撮影ビデオから、ナトリウムが白く広がっている映像などを意図的にカットした不祥事が発覚。事故から事件に発展し、運転再開は遠のいた。

 隠蔽体質を問われた動燃は10年に「核燃料サイクル開発機構」へと改組。さらに昨年10月には日本原子力研究開発機構へと組織を変えた。

 「惜しい10年だった」。もんじゅを見守ってきた敦賀市原子力安全対策課の松永隆司課長は、こう残念がる。技師でもある松永課長は「空白の10年がなければ、日本の核燃料サイクル開発は世界を引き離す成果をあげていた」と指摘する。昨年10月に政府がまとめた原子力政策大綱では、高速増殖炉を「2025年頃から商業ベースでの導入を目指す」としたが、その前提となるもんじゅは10年にわたって停止したままだ。


 この10年で原子力をめぐる世界の風向きは一変し、原発を抑制・廃止する動きが相次いだ欧米では、供給安定性に加え、CO2をほとんど排出しないなどの利点が評価されている。一時は開発を断念する動きが続いたロシアや中国、インドが開発に意欲的で開発再開を表明した米国も含めて開発競争が激化しつつある。

 過去の技術が蓄積されているもんじゅは、いまなお世界トップクラスの技術水準を誇る。ここ1、2年は各国から研究の進展を期待する声が高まっており、敦賀市の和泉明市議は「もんじゅは敦賀が世界に発信できるブランド。各国の研究者が集まる拠点に育てたい」と期待を込める。

 もんじゅの研究開発費は8000億円を超え、最終的に1兆円規模にのぼる見通し。現在の軽水炉原発に比べ大幅なコスト増は避けられず、実用化には採算性も課題となる。だが、経済産業省は軽水炉を越えるコストについては国が負担する方針で、昨年12月には「ポストもんじゅ」となる次世代の高速増殖炉(実証炉)を2030年ごろに建設する構想を発表。実用化を目指す姿勢を鮮明にしている。

 核燃料サイクルはエネルギーを有効利用する方策だが、もんじゅの事故に伴って、電力各社は使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを軽水炉で再利用するプルサーマル計画に当面の軸足を移している。だが、その燃料節約効果は15%に留まり、高速増殖炉とは比較にならない。

 どの国も実用化には至っていない高速増殖炉の技術的なハードルは高い。だが、技術立国を標榜する日本が乗り越えなければならない壁でもある。

2006年3月29日 産経新聞特集

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