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資源小国の挑戦 第1章 共生に向けて(8) 循環型社会へ広がり 菜の花も廃食油も変身
2006年02月10日
 琵琶湖の東部に位置する旧・愛東町。昨年2月、周辺1市3町と合併して東近江市となったこの町は、推古天皇の時代に聖徳太子の願いで建てられたという近江地方の最古刹、「百済寺」の門前町として栄えた長い歴史を、町のそこかしこに刻んでいる。

 そんな歴史の街が今、環境最先端の町として地方自治体や市民団体に注目されている。全国に先駆けて取り組んできた、家庭や飲食店などから回収した使用済みの食用油(廃食油)や、菜の花の種から精製した油を自動車の燃料にする「菜の花プロジェクト」が、大きな成果を結びつつあるからだ。


 「何とかならないかしら・・・」。平成元年の初春、藤井絢子さん(現滋賀県環境生活協同組合〈安土町〉理事長)は頭を抱えていた。

 昭和50年代、近畿地方の「水がめ」といわれた琵琶湖の水質汚濁。家庭から捨てられた廃食油やリンを含む合成洗剤がその一因だったが、藤井さんは地元生協の取り組みとして廃食油を一般家庭から回収し、リサイクルした粉石けんを販売し始めていた。

 しかし、ようやく事業が軌道に乗り始めた55年。洗剤メーカー各社が無リン洗剤を発売。使い勝手の悪い粉石けんは全く売れなくなってしまった。回収された廃食油はたまる一方。石けん在庫もみるみる積み上がっていった。

 「何とかならないかしら?」が「何とかしなくちゃ」に変わったとき、目に留まったのが「食用油でディーゼルエンジンを動かす」という新聞記事だった。「これだ!」。藤井さんは早速、ドイツや米国など、同様の事例の調査に入った。「菜の花プロジェクト」のスタートだった。

 天ぷら油やサラダ油などの食用油は、再加工することでディーゼルエンジンの燃料として利用できる。世界的にも「バイオディーゼル燃料(BDF)」と呼ばれ、軽油の代替燃料としての利用価値が注目されている。

 BDFの最大のメリットは、軽油に比べて黒煙の排出量が3分の1、硫黄酸化物の排出については100分の1に抑えられること。更に大気中の二酸化炭素を吸収する効果もあり、油の絞りかすは飼肥料として再利用することができる。

 「それだけではないんです」。藤井さんが注目しているのは、咲いた花を観光資源にし、食料としての栽培ではなく資源としての栽培が広がれば農業の活性化にもつながる。つまり、持続可能な循環型の地域再生の理想に近い姿がそこにあるというのだ。


 資源を循環させ、有効活用を図る。藤井さん主導で旧愛東町が「菜の花栽培」を始める前年の9年ころ、大手コンビニエンスストアのセブン-イレブン・ジャパンでは、弁当や惣菜を作る過程で出る野菜やパンのくずなどの食品廃棄物の再利用に頭を悩ませていた。

 1工場で1日に1トンも発生する食品廃棄物。その処理コストも膨らむ一方で、減量化は最大のテーマだった。

 「家畜の飼料にはならないだろうか?」。セブン-イレブン環境推進部の山口秀和統括マネジャーは「雑食性の豚ならどんどん食べてくれる」と考え、9年に家畜の飼料化に乗り出した。だがすぐに壁にぶつかった。食べてくれないのだ。

 豚はデリケートな生き物。好き嫌いも激しく、人には人気の揚げ物、キムチなどには見向きもしない。しかも飼料のにおいや成分で肉質にバラツキが出て、脂肪がにおいを発することもあった。

 「どうしたら豚が気持ちよく食べ、良い肉になるか」-。山口さんが悩んだ末にアドバイスを請うたのが宮崎大学農学部の入江正和教授だった。

 ちょうどそのころ、入江教授はパン工場の廃棄物を与えた豚の肉質が霜降り状になっていることに気づいていた。「パンを半分以上混ぜたらどうだろうか」。効果はすぐさま表れた。新飼料を与えた豚は、スペイン原産の最高級豚と評される「イベリコ豚」と並ぶ霜降り豚に生育した。

 エサのほとんどを輸入に頼る養豚業。同社は現在、九州の15の工場から出る食品廃棄物を佐賀県の乾燥工場で飼料化し、養豚農家に供給。今、国産飼料による高級豚の育成が進んでいる。


 旧愛東町で8年前、わずか30ヘクタールでスタートした菜の花栽培は、その後44の都道府県に広がった。町では菜の花から精製された燃料で公用車、循環バスが走る。

 回収や精製など課題は多いが、藤井さんは「エネルギーと農業の課題を解決する可能性を持つモデル」と、さらなる全国への広がりを夢見る。そのためには「自治体任せでなく、国も真剣に考えるとき」とも。

 少ない資源をいかに有効に活用するか。無理なく生活の中で消化し、さらには循環させるにはどうしたらいいのか-。企業、自治体、地域、市民・・・の小さな輪を大きな輪に育てるため、資源小国日本の挑戦は。エネルギー開発から効率利用まで、あらゆる分野に裾野を広げつつある。

=第1章おわり (エネルギー・環境問題取材班)

2006年2月10日 産経新聞特集
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