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資源小国の挑戦 第1章 共生に向けて(4) 世界規模で「石炭復権」
2006年02月05日
 二月は日本酒の仕込みの最盛期だ。早朝から酒米を蒸す作業が続き、作業場は白い湯気で包まれる。

 「でも昔と比べると、ずいぶん楽になりましたよ」。神戸市灘区の酒造会社「沢の鶴」の長江晴夫経営管理室長が感慨深げに語る。

 江戸時代から酒どころとして知られた「灘五郷」(なだごごう)。今も40もの酒造会社が集積し、日本酒生産量で日本一を誇る。沢の鶴も、創業300年を数える老舗だ。

 蒸し釜に蒸気を送る作業では、ボイラーの火加減を習得するまで10年はかかるとされる。一定の圧力、温度に調整するため早出・残業も当たり前。それが最近では、バルブをひねるだけで品質の安定した蒸気を得られるようになった。
 火力発電所から発電で余った蒸気を供給してもらうようになったからだ。


 沢の鶴の工場から高さ150メートルの2本の煙突が見える。神戸製鋼所神戸製鉄所の一角にある神戸発電所は出力140万キロワットという、都心部では珍しい大型の石炭火力発電所。建設されるきっかけとなったのは平成7年の阪神大震災だ。

 震災で、神鋼は神戸製鉄所の高炉の運転がストップするなど1200億円もの被害を受けた。当時は、「鉄冷え」と呼ばれる鉄鋼需要の低迷期。7年3月期の連結決算は、924億円の最終赤字となった。

 そうした中で、一筋の光明が見えた。発電事業である。規制緩和で電力会社に長期的に電気を売る独立発電事業者(IPP)への参入がメーカーなどに認められるようになった。もともと鉄鋼会社は製鉄所内に小規模な発電所を持っており、ノウハウがある。神鋼は2000億円を投じて発電事業に社運をかけた。

 「復興のシンボルになる」と市も応援した。災害時のライフライン自立にもつながる。だが、住民の反応は複雑だった。

 「なぜ、石炭なんだ」。地元説明会で、神鋼IPP本部の藤森直樹担当部長は厳しい質問を浴びた。

 石炭は鉄鉱石と並ぶ製鉄材料で、鉄鋼会社は長期の安定した調達先を持つ。石炭の陸揚げ施設や貯蔵庫も製鉄所に完備している。鉄鋼会社にとって石炭の使用には合理性があった。

 しかし、石炭には「真っ黒い煤煙」のイメージがつきまとう。市街地に近いだけに粉塵の飛散も心配だ。地球温暖化の原因とされる二酸化炭素(CO2)もたくさん出るのではないか-。だが日本の環境技術は世界最高水準を誇る。藤森担当部長は断言した。

 「美しい六甲の山と港に囲まれた神戸の町と共生する都市型発電所。これが、建設の絶対条件です」

 神戸発電所の1号機は14年春、2号機も16年に運転を始めた。神戸市や兵庫県と環境保全協定を結んだ神鋼は規制基準値を大幅に下回る排ガス・排水処理を施した。全長約5キロの送電線は地中に埋め、発電所の外観も目立たないグレーやベージュに塗って景観に配慮。事業費の3/1を環境対策にあてた。

 神戸発電所はいまや、150万都市のピーク電力の7割をまかなう頼もしい存在だ。余った蒸気は地元の酒造3社に送っている。


 昭和30年代にエネルギーの主役の座を石油に譲った石炭だが、今も1次エネルギー供給の20.3%を占め、その比率はここ数年、少しずつ伸びている。

 中東依存度の高い石油は、日本にとってエネルギー安全保障のアキレス腱とされる。石炭もほぼ全量を輸入しているが、調達先は豪州57%、中国18%、インドネシア13%、カナダ5%と分かれており、リスク分散を図れる。採掘コストが安く運搬しやすいのも再評価されている理由だ。

 しかも、石油が一般に40年分の可採埋蔵量しかないのに対して、石炭は160年以上の埋蔵量があるとされる。「エネルギーの安全保障を考えると資源小国・日本が石炭を有効利用しない手はない」。Jパワー若松研究所の木村直和所長が指摘する。

 排煙の脱硫・脱硝技術が進歩し、この点では石炭はすでに”クリーン・エネルギー”といえるようになった。残る課題はCO2の排出量抑制だが、発電効率を高めることで解決する取り組みが進んでいる。

 Jパワー若松研究所が開発しているのは、石炭を900度以上の高温に熱してガス化する技術。「究極の石炭利用発電プロジェクト」といわれる。米ブッシュ政権は2003年2月、石炭ガス化プロジェクトの推進を提唱した。発電や水素製造に利用する計画で、10年間で10億ドルをかける。

 原油価格が歴史的な高値で高止まりし、原子力利用も停滞している中、石炭は世界的な規模で”復権”を遂げようとしている。

2006年2月4日 産経新聞特集
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