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上海総領事館職員自殺「これは日本の国権への攻撃」 - 佐藤優氏
2006年01月14日
 在上海領事館の男性職員(電信官)が「女性問題」をネタに中国公安当局に情報提供を迫られ、自殺した事件が日中関係に激震を走らせている。

 亡くなった電信官には筆者も現役時代に仕事でお世話になった。中国公安当局の罠にはめられ、死という形でしか問題を解決できなかった彼の気持ちを思うと胸が締めつけられる。ご冥福をお祈りするとともに、ご家族、近親者の皆様に衷心からお悔やみ申し上げる。

 外務省はこの事件をこれまで公表しなかった理由について「遺族の強い要望」(昨年12月28日、鹿取克章外務報道官会見)としているが、これはすり替えの論理だ。本件は電信官に対する人権侵害であるとともに日本の国権に対する攻撃なのだ。北朝鮮による拉致事件と同じ次元の問題だととらえる必要がある。

 本人の脇が甘く、行動に問題がある場合でも、外交官は日本国家を代表している。中国公安が「女性問題」で電信官を脅し、情報提供を求めたことは、「接受国は、相当の敬意を持って領事官を待遇するとともに、領事官の身体、自由又は尊厳に対するいかなる侵害も防止するためすべての適当な措置をとる」(第40条)と定めた「領事関係に関するウィーン条約」に違反する。

 軍人、外交官は状況によっては無限責任、つまり国益のために自己の生命を捧げることもあるというのが国際基準だ。従って、今回の事件に関しては、個人の人格権の枠組みを越えた対応が国権の観点からなされなくてはならない。

 本件について、我々日本人は本気で怒るべきだ。感情的にならず中国政府に非を認めさせ、謝罪させる戦術を組み立てることだ。日本が被害者で中国が加害者であるにもかかわらず、中国側は「1年半たった今、日本側が古いことを改めて持ち出し、さらに館員の自殺を中国側関係者と結び付けているのは、完全に下心を持ったものだ。われわれは、なんとかして中国のイメージを落とそうとする日本政府の悪質な行為に強い憤りを表明する」(12月30日、奉剛中国外交部報道官発言)と開き直っている。

 中国側は明らかにウソをついている。しかし、川口順子外相 - 竹内行夫事務次官時代に、外務省からインテリジェンス専門家が一掃されたため、日本側の交渉技法が稚拙になり中国につけ込む隙を与えてしまっているのだ。日本政府はまず、中国公安が電信官に情報提供を強要したことを裏付ける動かざる証拠を突きつける。そして、「中国側からの回答を待ちたいと思います」(鹿取外務報道官)などの寝言ではなく、48時間あるいは72時間の回答期限を一方的に通告し、中国側を追い込んでいくのだ。

 中国側は日本世論の性格を熟知している。今後の謀略戦で、日本の有力政治家、幹部外交官の中国におけるセックス・スキャンダルがリークされるであろう。中国側の意図は、日本国民の怒りを日本国内に向け、中国の違法行為から目を逸らさせることだ。

 中国筋からのリークであろうとも、それが事実ならば政治家であろうが外交官であろうが責任をとるのは当然だ。しかし、責任追及は日本人の手によって、日本国家の名誉と尊厳を棄損しない形で行わなければならない。現在、日中間では目に見えない「情報戦争」が行われていることを認識する必要がある。

 電信官は重大な秘密へのアクセスが可能だ。事件後、暗号を変更したので安全だと見るのは甘い。空手や茶道で流派ごとに型があるように、暗号も国ごとに基本的な型がある。この型が外国、特に中国に盗られた場合、暗号の切り替えでは対応できないような深刻な影響がありうるのだ。

 秘密文書を運搬するクーリエ体制、内部の人間関係についても、工作機関が喉から手が出るほど欲しい情報だ。まず、この電信官が何を知っていたかについてきちんと確定しなくてはならない。その上で、「疑わしきは黒」という諜報世界の基準に従い、体制を組み直す以外にすべは無い。

 電信官に秘密情報の提供を迫ることは「あってはならないこと」だ。しかし、インテリジェンスの世界はすべてが応用問題で「あってはならないこと」が起きることもある。その場合、情報専門家の「リエゾン(連絡係)」が裏で処理する。

 「連絡係」がいない場合、大使館のナンバー2である次席がこの役割を果たす。トップの特命全権大使は国家の顔そのものなので、このような汚れ仕事に関与させないのが諜報世界での常識だ。次席が乗り出すことで日本政府が本件をどれぐらい深刻視しているかを中国側に示すのだ。

 事件当時の北京の日本大使館のナンバー2は原田親仁特命全権公使(現欧州局長)だった。原田氏は旧ソ連国家保安委員会(KGB)との折衝を経験した外務官僚で、このような事件の処理には最適の人材だ。原田氏が中国側とどのような折衝をしたかが本件の真相解明においても鍵を握っている。ところが今回、原田氏が全く表面に出てこないのはどうしたことか。

 毅然たる対応を日本政府が取り、中国に今後、インテリジェンスの国際基準を遵守することが中国の国益に合致することを認識させる。これこそが真の日中友好外交だ。

【寄稿 佐藤優】
2006年01月12日 産経新聞2面
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