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エネルギー特集:第2部(2) 見直された核燃サイクル
2005年12月09日
 「永田町で怪文書が出回っているらしい」。そんな情報が電力業界を駆け巡ったのは昨年春の事だった。タイトルは「19兆円の請求書-止まらない核燃料サイクル」。核燃料サイクルとは、使用済み核燃料を再処理し、取り出したプルトニウムやウランを原子力発電所の燃料として再利用すること。その文書では核燃料サイクルを進めれば、総額19兆円という巨額の国民負担が発生することを指摘し、中止すべきだと主張していた。

 文書は誰が作成したのか。犯人探しが始まったが、「作成者は経済産業省の若手官僚。経産省首脳もお墨付きを与えているようだ」との見方が次第に強まると、電力業界に衝撃が走った。原子力政策を推進する立場の経産省が、核燃サイクル路線の見直しを求めたとも受け止められたからだ。

 追い打ちをかけるように、経産省が核燃サイクルにかかるコスト試算を公表せず、国会でも「試算したものはない」と答弁していた事も判明。10年前の試算だが、核燃サイクルよりも使用済み核燃料をそのまま地中に埋める「直接処分」の方が安いというデータがあったにもかかわらず、公表していなかった事が発覚した。

 核燃サイクルをめぐる2つの”事件”。これを踏まえ、昨年6月に始まった原子力委員会の新計画策定会議では、核燃サイクル路線の是非が最大の焦点となった。

 その結果、コストだけを見れば、確かに再処理は、直接処分に比べて10-15%程度高くなると試算された。だが、その「コスト論」には致命的な欠陥があった。直接処分しようにも、使用済み核燃料を埋め立て処分する場所をどこにするかという最大の問題の答えがなかったのだ。

 また、直接処分を選択すれば、再処理を前提に建設されている青森県六ヶ所村の再処理施設に対し、全国の原発で発生する使用済み核燃料の搬入ができなくなる恐れもある。最終処分場が見つからなければ、日本の原発は順次、運転停止に追い込まれる事態すら予想されたのだ。

 さらにエネルギー安全保障の観点でも核燃サイクルの必要性が指摘された。電力不足を背景に中国やインドなどでは、原発を相次いで建設する計画が進んでいるが、そうなれば世界的に需要が拡大するウランの国際市況は高騰する可能性がある。しかし、使用済み核燃料を再処理すれば、ウランの使用量を全体として10-20%程度節約できるとも試算された。

 この結果、新計画策定会議では「総合的には再処理路線が優れている」(近藤駿介原子力委員長)として、昨年11月に「サイクル路線の堅持」を確認。今年10月には、最終的に原子力政策大綱の中にも盛り込まれて閣議決定された。 核燃サイクルの必要性は、海外でも注目され始めている。ネバダ州ユッカマウンテンで使用済み核燃料を直接処分している米国でも今年、周辺の環境などに配慮し、使用済み核燃料の再処理工場の建設予算を初めて計上した。コスト面だけでなく、環境面からも核燃サイクル路線が見直された格好だ。

 「核燃料サイクルのコストについては十分な議論がなく、疑問に思っていた」。経産省のある幹部は今、こう打ち明ける。日本ではこれまで、使用済み核燃料の処分方法について、核燃サイクル路線以外は踏み込んで議論された事がなかった。電力業界を震撼させた「19兆円の請求書」は、そうした省内の一部の空気を代弁したものともいえる。

 確かにこれまでは「当り前」として進められてきた核燃サイクル計画だが、こうした騒動を経た事で「公の場で直接処分という可能性も含めて幅広く検討できた」(電力会社幹部)と指摘されており、原発関係者の意思統一が進んだのは間違いない。

 もちろん、高速増殖炉の実用化がいまだに見えないなど、サイクル路線が越えなければならない課題は山積している。ただ、核燃サイクルという資源小国・日本が進むべき道筋が改めて照らし出された点で、「19兆円の請求書」の効用は小さくはなかったとも言える。

2005年12月09日 産経新聞特集
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