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資源小国の挑戦 第2章 原発再考(7) メーカーの攻防
2006年04月01日
 「ウエスチングハウス(WH)は、純粋に高い価格を提示した企業に売却するつもりだ」。昨年秋、経済産業省資源エネルギー庁の幹部は、来日した英国核燃料会社(BNFL)の首脳から、こう耳打ちされた。

 BNFLは業績悪化を理由に傘下の米原子力大手、WHを売却する方針を示し、国際入札を行っていた。ただ、WHは現在の原子力発電の主流である加圧水型軽水炉(PWR)の重要特許を保有し、米国のエネルギー安全保障とも密接に関係するため、米英以外の企業が買収する場合には米議会との難しい調整を迫られると見られていた。

 だが、来日したBNFL首脳の発言は価格さえ折り合えば、こうした問題をクリアできることを意味していた。エネ庁幹部は「日本企業が買収できる」と確信した。

 それから数ヵ月たった今年2月、確かに日本企業がWH買収の交渉権を獲得した。だが、落札したのはWHと提携関係にあり、”本命”と目されていた三菱重工業ではなく、東芝だった。


 東芝が提示した買収金額は54億ドル(約6400億円)。当初予想の2000億円台に比べ、二倍以上に膨らんでいた。三菱重工のある幹部は「当初の提示価格は40億ドル。東芝はうちが50億ドルを提示すると思っていたのではないか」と推察するが、東芝はそこまでしてもWHを手に入れたい理由があった。

 長く停滞していた世界の原発市場は、ここに来て環境問題などによって原発の再評価が進み、大きく動き始めている。米国が4半世紀ぶりに原発新設を決定した他、中国も今後15年で100万キロワット級の原発を30基程度建設する計画を打ち出している。

 世界の原発市場は、PWRが約7割を占めている。中国も当面はPWRを採用する方針だ。これまで沸騰水型軽水炉(BWR)で原発事業を展開してきた東芝が拡大する世界の原発市場に本格参入するには、多少の無理をしてでもPWRを手がけるWHを買収する必要があったのだ。

 「今後、世界トップクラスの原子力グループとして、市場のリーダーシップを発揮できると確信している」。2月8日に都内で開かれた記者会見で、東芝の西田厚敏聡社長は胸を張った。

 買収金額が跳ね上がり、アナリストなどにはその採算性を疑問視する声があるのは事実だ。だが、BWRとPWRという両方の原発技術を手にした原発メーカーのトップとして、西田社長の言葉は自信に満ちあふれていた。


 国内で稼働している原発が55基にのぼる日本は、世界3位の原発大国だ。だが、現在建設中の原発はわずか2基しかなく、今後は数年に1基しか原発の新設がない状態が続く。電力自由化を迎え、電力会社にはこれまで以上のコスト競争力が問われており、1基あたり3000億円以上の巨額な設備投資が必要となる原発の新設には慎重な姿勢に転じている。

 このため、原発メーカーが現在の体制を維持するには厳しい時代に入っている。すでに売上高だけでなく、研究開発費や技術者数も減少し始めている。長い間、国内市場だけで事業を展開してきた国内原発メーカーにとっては、生き残りに向けて海外市場に打って出るほかに選択肢はない。

 東芝による落札から10日あまり。40年にわたる提携関係にあったWHをさらわれた三菱重工の西岡喬会長は、記者会見の場で「理解に苦しむことが起こった」と述べ、不快感を隠そうとしなかった。共同開発した新型炉をひっさげ、中国での原発入札に参加するなどWHとの提携を深めていた三菱重工だが、海外事業の戦略見直しは避けられない。

 だが、三菱重工には巻き返しの切り札がある。PWRのもう一方の雄、仏アレバグループとの連携だ。三菱重工幹部は「可能性はないとは言えない。我々がキャスチングボードを握っている」と言う。アレバと組むことになれば、世界のPWR市場は「東芝-WH」と「三菱重工-アレバ」という二大勢力に集約していく可能性がある。世界の原発業界をあっと言わせた東芝によるWH買収劇。だが、それは世界規模で進む業界再編の序章に過ぎない。

2006年4月1日 産経新聞特集
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