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資源小国の挑戦 第2章 原発再考(6) 地震対策見直し
2006年03月31日
 昨年8月16日ごろ、東北電力女川原子力発電所(宮城県)の一室で大谷順一副所長は「ゴーッ」と低く響き渡る海鳴りを耳にした。この地域では地震発生前には必ず海鳴りが聞こえる。
「来るぞ」。身構えた数秒後、強い揺れが短い周期で発電所全体を襲った。

 ただ、棚から物が落ちることもなく、大谷副所長は「それほどの被害はないだろうと思った」と言う。原子炉は安全のために自動停止したが、原子炉の機器や配管などには地震による損傷は認められなかった。しかし、女川原発はこの地震によって、今年1月に2号機が運転を再開するまでほぼ5ヶ月にわたり、3機の原子炉全てが運転を停止する事態に追い込まれた。

 地震国である日本では、原発に万全の地震対策が求められる。このため、原発の立地地点ごとに過去に発生した地震を解析し、およそ現実的ではないと考えられる最大の揺れを想定して耐震設計が施されている。ところが昨年8月の地震では、女川原発で想定されていた最大の揺れを一部で越えてしまった。

 なぜ想定外の揺れが起きたのか。そして耐震性に問題はなかったのか。東北電力は詳細な解析を迫られ、原発の運転を長期間停止せざるを得なくなった。


 解析作業でわかったのは、宮城県沖で起こる地震には短周期の揺れが大きくなるという地域特性があることだった。東北電はこの特性を考慮して安全性の検証作業を改めて実施。その結果、大きな被害が予想される想定宮城県沖地震のマグニチュード(M)7.6相当よりもはるかに大きいM8.2相当の地震が発生しても、安全機能は維持できるとの結論をまとめ、経済産業省原子力安全・保安院のお墨付きも得た。

 女川原発のケースは、日本の原発が想定される地震の揺れに対し、余裕を持って設計されていることを物語る。ただ、現在の原発の耐震指針は昭和53年に定められ、56年に見直されたもので、その後、地震に対する知見の蓄積も進んでいる。新たな知見を耐震指針に盛り込むため、国の原子力安全委員会は平成13年から見直し作業を進めている。

 だが、安全委の最終結論を前にして、電力業界を揺るがす司法判断が下った。北陸電力志賀原発二号機(石川県)が耐震性に問題があるなどとして、金沢地裁が24日、運転差し止めを命じたのだ。北陸電は「不当な判決」として直ちに控訴、運転も継続しているが、今回の判決が電力会社に地震対策の充実を迫ったことは間違いない。


 すでに電力会社の中には独自に耐震補強工事に動き出したところもある。想定東海地震の震源地にある中部電力の浜岡原発(静岡県)だ。100年から150年間隔でM8クラスの地震が発生している地域であり、地震に対して不安の声がなくなることはない。M8.5の地震にも耐えられる対策が施されており、中電浜岡地域事務所の藤明スタッフ部長は「東海地震に対する不安はない」と言い切るが、さらに耐震余裕度を高める補強工事を進めている。

 2月中旬、4号機の建屋外に深さ数メートルに達する溝が掘られ、溝の中には冷却水系配管を守るコンクリート製のダクトがむき出しになっていた。強い揺れにダクトが耐えられなければ配管が損傷を受けかねないため、溝にセメント系材料を流し込んで地盤ごと固めてしまおうというのだ。また、高さ100メートルに及ぶ排気塔を鉄塔で囲う工事なども計画しており、工事費用は3-5号機で一基あたり数十億円、耐震指針が定められる以前に設計された1、2号機では数百億円に達する見通しだ。

 だが、一連の対策がすべて終われば、浜岡原発は中央防災会議による想定東海地震の揺れの2倍から3倍の大きさにも耐えられるようになる。確かに費用負担は大きいが、藤部長は「地震に対する不安を軽減できれば本望」と話す。地元の不安解消に向け、電力会社には不断の取り組みが求められている。

2006年3月31日 産経新聞特集
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