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エネルギー特集:第1部(2) 日の丸原油
2005年10月30日
 日本の石油業界で「事件」と呼ばれる一件がある。昨年11月、アラブ首長国連邦(UAE)のザイド大統領が亡くなった際のこと。仏シラク大統領ら各国首脳が相次いで弔問に訪れる中で、日本から派遣されたのは、首相補佐官(当時)の川口順子元外相だった。

 日本は年間で約2億4千万キロリットルの原油を輸入しているが、UAEはその4分の1を占め、サウジアラビアと並ぶ最大の原油輸入先だ。中東と良好な関係を保つことはエネルギーの安定調達に欠かせない。「なぜ首相補佐官なのか」。多くの業界関係者は政府の対応に不満を募らせた。

 石油資源に乏しい日本は、国内消費量のほぼ100%を海外からの輸入に頼る。なかでも中東地域への依存度は90%に迫る。民間の危機感が伝わったのか、今年8月に行われたサウジのファハド国王の葬儀には、皇太子さまに橋本龍太郎元首相が同行した。

 自ら権益を持つ「自主開発油田」の獲得も原油の安定調達にとって欠かせない。過去の石油危機と異なり、現在の原油価格の高止まりは需要増に伴って原油生産余力の減少が背景にある。2002年当時に日量700万バレルを超えていた石油輸出国機構(OPEC)の生産余力は、現在では150万バレルを下回る。原油獲得競争はいやがうえにも激しさを増している。

 だが、石油鉱工業連盟によると、日本の自主開発油田の生産量は平成16年度で日量68万バレル。国内消費量の10%強に過ぎない。250万バレルもの権益を持つ米エクソンモービルなどの欧米メジャー(国際石油資本)には日本企業は束になってもかなわない。

 和製メジャーの役割を期待された石油公団は巨額の損失を出し、今年4月で解散。業務の一部は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が引き継いだが、公的融資が廃止されるなど民間支援の枠組みは大幅に制限された。「4番打者抜きで野球をやっているようなもの」。経産省の幹部からはこんな嘆きも洩れてくる。

 そんな日本にアフリカの地から朗報が飛び込んできたのは10月3日のことだ。世界9位の確認埋蔵量を持つリビアが2日(現地時間)に行った油田鉱区の国際入札で、新日本石油など日本企業5社が26鉱区中、6鉱区を競り落としたのだ。「ウイナーは日本の○○です」。主催したリビア国営石油公社からこう告げられると、日本企業の入札担当者たちは握手をして喜びあった。

 経済制裁を受けたリビアは約390億バレルの確認埋蔵量がありながら、砂漠地帯の大半は未開発で世界に残された数少ない有望鉱区だ。入札に参加した石油資源開発の安藤純一郎・海外本部グループ長は「ぎりぎりの条件を出した」と打ち明ける。1月の第1回入札で米国勢に完敗した反省を踏まえ、各社とも今回は本気で鉱区を取りにいった。

 かつて日本はカフジ油田という自主開発油田を持っていた。昭和36年から累計で28億バレルもの原油を日本に供給し、2度の石油危機の際にも日本のエネルギー供給を支えたが、サウジとは12年2月、クウェートとも15年1月で権益を失った。中国が世界でエネルギー確保に血眼になるなど資源獲得競争が激化する中で、自主開発油田の重要さは増すばかりだ。

 ただ、国のエネルギー戦略を左右する巨大油田の権益獲得は、国家戦略に左右され、一筋縄ではいかない。イランのアザガデン油田をめぐっては、イランの核開発を懸念する米国が交渉断念を求めた事で政府主導の交渉は揺れに揺れた。結局、昨年2月に契約調印するまで交渉期間は3年以上に及び、各国の思惑が交錯する油田の権益確保の難しさが浮き彫りになった。

 官民一体でエネルギー確保を進める外国勢に対抗し、新たな4番打者をどう育成するか。経産省では油田開発への支援強化策も検討するなど、新たなエネルギー戦略の模索を始めている。

2005年10月30日 産経新聞特集
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