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国連再考 第5部 (06) ‐ 日本と常任理事国
2003年12月01日
 国連について日本がこれから具体的に考えねばならない最大課題の一つは、安全保障理事会の常任理事国入り問題である。 この問題は国連側だけでも複雑な要因が多数絡みあい、難解を極めるパズルのごとく、回答の模索は果たして答えがあるのだろうかと思わされるほど難しい。

 日本国内でも政治家や国民の意識に憲法までが絡んで、国のあり方や価値観にさかのぼり、答えをまとめるのは難しい。 日本にとっての国連の現状がおかしいという点でのコンセンサスはあっても、では国連をどう改革し、国連の中枢の安保理をどう変えて、日本が安保理の枢要の常任メンバーになるべきかどうか、となると、反応はとりとめもなく広がっていく。

 だが日本政府は国連の場では常任理事国となる意向は一九六八年頃から非公式にちらつかせ始めた。 国連での公式の意向表明は九四年九月の村山富一政権下での河野洋平外相による総会演説が初めてだとされる。

 「日本としては多くの国の支持を得たうえで、安保理常任理事国としての責任を果たす用意があることを私は表明したいと思います」

 河野氏のこの屈折した表現は日本国内でも「用意があるとの示唆にすぎず、立候補ではない」と解釈される一方、「立候補をあまりに明確に表明しすぎた」という批判をも招いた。 多様な解釈の背景には当時の国内での多様な動きがあった。

 当時の自民、社会、さきがけの連立政権の内部でも、社会党などは安保理常任理事国入りは日本に憲法が禁じる軍事的貢献を強いる、として反対した。 自民党にも難色を示す議員達がいた。 そういう傾向の連立三党の国会議員達が結成した「国連常任理事国入りを考える会」の会長に小泉純一郎氏が就任したことは興味深かった。

 この会は日本の常任理事国入りは国連改革の進み具合、アジアの近隣諸国の支持、日本国民のコンセンサスという3要素を考慮に入れて、慎重な態度で臨む、と決議していた。

 たしかに日本の常任理事国入りという課題は国連自体の改革と密接に絡み合っていた。 国連の中核は安保理で、安保理の中核は拒否権を持つ常任理事国五カ国だった。 第二次大戦の戦勝五カ国である。 日本にとってはこの構造がまず不当なわけだ。 安保理の構造のゆがみに対しては他の諸国からも不満はぶつけられていた。

 そんな不満から一九九三年後半に安全保障理事会の改革を進める新機構「安保理改革作業部会」がインド提案の決議に基づいて組織された。 同部会にはどの加盟国も自由に参加できた。 実際の議論は九四年一月から始まったが、進展はなかった。 全員一致のコンセンサス方式がとられたことが進展なしの理由としては大きかった。

 しかし安保理を実際にどう改革するかを巡っても各国間の主張は激しく割れて、十年近くもの歳月がむなしく流れていった。 議論の分かれ目は大きくまとめれば次の三点だとされる。

 まず第一は安保理のメンバーの数をどうするか、である。 現在は常任理事国が五、非常任理事国が十と全体で十五だが、この数は改革では当然、増えるとして、ではどれほど増やすのか。 日本などは常任理事国を十とし、非常任理事国を十四にすることを提案している。

 だが米国は安保理拡大には長年、反対し、クリントン政権時代は最大限合計二十一カ国まで、と主張していた。 ところが二〇〇〇年四月には「二十一をやや上回る数を検討する用意がある」と言明するに至ったという。

 第二は安保理で中核となる常任理事国を増やす場合、どの国を新たに加えるか、である。 候補は先進国では日本、ドイツ、アジアではインド、中南米ではブラジル、メキシコ、アルゼンチン、アフリカではナイジェリア、南アフリカ、エジプトといった国の名があがっている。 だがドイツの常任理事国入りにはイタリアが絶対に反対、インドにはパキスタンが猛反対と、各国間の駆け引きが複雑をきわめる。

 第三は常任理事国が持つ拒否権をどうするか、である。 拒否権はそもそも五カ国だけが持つ特権だから、他の国はすべてといってよいほどその特権の制限や廃止を望んでいる。 だが特権を保有する側は絶対に放棄はしない。 そんな構図の中でもし新しい常任理事国が加わった場合、その拒否権をどうするか、という難題があるわけである。


古森義久氏 産経新聞2003年12月1日付朝刊記事

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