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国連再考 第4部 (03) ‐ 非同盟の攻勢
2003年10月22日
 米国と国連との対立が目に見えて激しくなったのは一九八〇年代だとはいえ、その素地はすでに一九七〇年代に出来ていた。 国連の長い歴史でもこの一九七〇年代は最も複雑多岐な変質をたどった10年間だったともいえる。

 この期間の国連は経済秩序をめぐっては新興諸国の攻勢が勢いを増し、米国などの先進諸国をたじろがせる一方、最大任務の平和と安全の維持についてはきわめて弱体な軌跡を描くこととなった。

 植民地を脱した新興独立国が次々と国連に加わるという第三世界の拡大のうねりは六〇年代から七〇年代へと続いた。 東西両陣営のいずれにも属さないと宣言するインド、ユーゴスラビア、インドネシアなどによる非同盟運動がさらに広まって、国連でも開発途上の非同盟諸国が百前後を数え、最大のブロックとなった。

 こうした第三世界諸国の推進で国連が一九七四年に採択した宣言が「新国際経済秩序」だった。 同宣言は次のような革命的な書き出しだった。

 「先進国と開発途上国のギャップは開発途上国のほとんどが独立国家として存在せず、不平等が永続された時代に確立されたシステムの中で今もなお広がり続けている」

 このシステムとは富める側がリベラルな哲学と自由競争市場の原理を社会的に弱く経済的に競争力のない側に押しつける体系だとされる。 だから既存の国際秩序を信奉する側にとって、「新国際経済秩序」とは国際法や国際慣行の枠組み全体を不平等として排除する試みとして迫ってくる。 だが第三世界にとっては連帯して長年の抑圧や搾取を逆転させ、報復する正義の闘争であり、国連はその絶好の舞台だった。

 国連は同年、また第三世界諸国の推進で「国家の経済的権利と義務の継承」という憲章を採択した。 同憲章は開発途上国には開発する権利があり、先進国にはそれを援助する義務がある、という趣旨だった。 南北の経済関係を革命的に変えようとする意図の表明だった。

 七四年当時、米国の国連代表だったジョン・スカリ氏はこうした第三世界の動きを「多数派の独裁」と呼んだ。 全体でも世界の貿易や投資の20%ほどしか占めない第三世界の諸国が一方的に世界の経済の枠組を決めることは理不尽だと非難したのだった。 経済面での南北対立のこうした構図は国連の内部に足並みの基本的な乱れをもたらし、単一有機体としての国連の力を弱めることとなった。

 一方、安全保障面では一九七〇年代前半はなおベトナム戦争が燃えさかり、七三年三月には北ベトナム軍による南ベトナム制圧で終わったものの、世界を揺るがす軍事紛争への国連の無力を改めて印象づけた。 米軍の介入中は米国が国連の介入に反対することは明らかだった。

 七一年十二月にはインドとパキスタンが全面戦争を始め、インド軍が東パキスタンの主要地域をあっというまに制圧した。 国連安保理での即時停戦の決議案はインドを支援するソ連の拒否権で次々に葬られ、国連はインドが勝利を決定的にするまでは何も出来なかった。 七八年十二月にはベトナムの大部隊がカンボジアに侵攻し、ポル・ポト派「民主カンボジア」政権を首都プノンペンから撃退し、親ベトナムの新政権を樹立する。 「民主カンボジア」は国連安保理にベトナム軍撤退の提訴をするが、ソ連の拒否権にあう。

 七九年二月、中国がベトナムへの「懲罰」と称して、大軍をベトナム領内に侵攻させる。 国連は何も行動をとることが出来なかった。

 七九年十二月にはソ連軍の大部隊がアフガニスタンに侵攻し、全土を占領して、新政権を樹立する。 ソ連の軍事占領を不当だとする世界各国五十二ヶ国が要請した結果、国連安保理が開かれる。 だがアフガニスタンからの外国軍の即時全面撤退を求める決議案は、ソ連の拒否権で採択されないまま終わる。

 こうした七〇年代の軌跡は国連が国際的な平和と安全の保持では米国とソ連、つまり西側陣営と東側陣営の対立の下でまったく無力となってきたことを物語っている。 七三年十月の第四次中東戦争でのように国連は米国とソ連が合意して初めて動けるのが現実だった。

 だがほとんどの紛争では米ソ両国は対立し、しかも第三世界がソ連に寄るという複層の「反米」対立構造が形成されていったのである。


古森義久氏 産経新聞2003年10月22日付朝刊記事

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