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国連再考 第3部 (10) ‐ 行財政諮問委の謎
2003年10月03日
 国連という存在は知れば知るほど、複雑怪奇に見えてくる。 国連の各機関でも最大の権限をふるう組織の一つの「行財政問題諮問委員会」(ACABQ)の実態など外部の目にはまるで謎としか映らない。

 同委員会は一九四七年に国連総会の決議でつくられた。 その任務はまず第一には二年間で総額二十七億ドルにものぼる国連通常予算の審査である。 国連事務総長が作成し、評価を総会に報告するのだ。 平和維持活動に関する予算も同時に審査する。

 任務の第二は国連全体の行政と財政に関する案件として各職員の昇進や給与の制度、ポスト新設を審査し、総会に助言することであり、第三は国連開発計画(UNDP)、難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連児童基金(ユニセフ)、国連大学国連環境計画(UNEP)など、国連の常設・補助機関の予算についても総会に報告することである。

 だから国連全体でも権限の強大なことこのうえない委員会なのだ。 予算でも給与、昇進でも、ここで阻まれれば、国連の機能全体が止まりかねない。

 国連全体の財務と総務をつかさどるこの委員会は十六人の委員で構成される。 委員は総会の行政・予算を管轄する第五委員会の推薦により総会で選ばれて任命され、任期三年、ただし再選は認められる。

 だが最も奇異なのはこの行財政問題諮問委員会の委員長のポストがこれまでもうなんと二十八年間も同一の人物によって占められてきたことである。 タンザニア人のコンラド・エムセリ氏が一九七五年に委員長となり、最初は一年ごと、八八年以降は三年ごとに再任を重ね、二〇〇〇年にもまたまた再選されて、委員長のイスに座っているのだ。

 国連の各機関全ての中でも最高責任者の地位を継続して保つ年月の長さでは、エムセリ氏はチャンピオンである。 いや、いかなる国際機関でも、そのトップの座が二十八年間も同じ人物で占められるという例はまずないだろう。

 現在六十五歳のエムセリ氏は二十五歳でタンザニア外務省の外交官となり、一九六〇年代後半から国連で働き、七一年に行財政問題諮問委員会の委員となった。 そのまま委員を続け、七五年に三十七歳で委員長に就任した。 エムセリ氏はアフリカ諸国の支援を得て、このパワフルな委員会でパワフルな地位を築いていったが、八〇年代には自分の特別秘書として登用したメリー・ブラウンという女性が実は内妻だということで醜聞となった。

 エムセリ氏は当初、年間二万五千ドルだった自分の給与を十四万ドル近くにまであげ、ブラウンさんの給与も秘書クラスでは最高の六万ドルにまで引き上げた。 自分たちの給与を決めることまでこの委員会の権限に入っていた。 カリブ海のバルバドス出身のブラウンさんはエムセリ氏との間に子供があり、同氏と同居すると伝えられた。

 国連の規則は職員が配偶者とともに働くことを禁じている。 だがエムセリ氏はブラウンさんとの間にはあくまで正式の婚姻関係はないと述べるとともに、自分は国連の職員ではないため、その規則はあてはまらないとも反論した。

 同委員会の審議の進め方も変則だった。 ニューヨーク・タイムズがこの点を九五年六月に報じている。

 「行財政問題諮問委員会で決定がどう下されるのかは外部にはまったくわからない。 エムセリ委員長は財政を正式に学んだ経歴は皆無であり、委員長の会合はすべて秘密にされるからだ。 公共性の強い予算の審議を秘密にしなければならない理由はない」

 確かに国連の予算をどう使うか、組織をどう動かすか、という課題はそこに加わる各国の代表や資金を負担する各国民にわかる形で論じられてしかるべきだろう。 まして同じ人物がその重要課題の決定を左右する地位に二十八年間も留まることにも、一般が理解できる説明が必要だろう。 こういう諸点をワシントン・ポストが九二年九月に取り上げ、エムセリ氏に不正はないにしてもあまりの長期留任はおかしい、と問題を提起した。 その時点では十七年間の在任だった。

 だがエムセリ氏はその十一年後にもなお在任しており、その間の九六年には逆に米国代表が委員会から外された。 アフリカ諸国の支援を得ての動きだった。 国連の闇はまだまだ深いようなのである。


古森義久氏 産経新聞2003年10月3日付朝刊記事

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